明日も天気になーあれ!

主にQuestNotesやらTRPGやらをやっている人

QuestNotes

遠い星空の前日談(プリクエル)-1

夜。月が高く昇り、祭りに浮かれていた子供たちがすっかり寝静まり、大人たちが杯を交わし合っている頃。 町外れに有る教会の一室には、小さな明かりがついたままになっていた。 忙しなく羽ペンを走らせ、手元の帳簿と睨めっこを続けているのは、長い金髪の…

仄かに甘く、そして切なく

ふと、懐かしい香りに足が止まる。甘く爽やかな、柔らかい香り。昼下がりの賑やかさの中、初夏の風が運んできたその香りに自然と視線が誘われる。瑞々しい緑に、沢山のオレンジ色の果実。白い花弁が所々に顔を覗かせ、穏やかな光に体を揺らせている。食べ頃…

如何にして彼は冒険者を名乗るようになったか

白く鋭い風が、襤褸きれに包まれた体を斬る。 切った額から流れる紅が、ぽたり、ぽたりと雪へと落ちてゆく。――クソッたれが。まだ幼く柔らかい手で、拾った角材を握りしめ。ずり落ちそうになるソレを背負いなおす。 そして視界を滲ませる紅を乱暴に拭い、内…

『願いと祈り』

もしも願いが叶うとして 今の私は、何を願うのだろう小さな背中が、只管に祈り続ける どうか父を返してください どうか、どうかお願いしますとそっと、目を閉じてみる 幾つも浮かぶ、見慣れた笑顔 その中の一つ、不器用な微笑みもしも、願いが叶うなら 小さ…

『重ならない面影を重ねて』

不器用な人だった 幼い私には解らなかったけれど、今になってそう思う無鉄砲な人だった 記憶の中の大きな背中が、思い返せばあんなに儚いけれど、優しい人だった 頭を撫でる掌の暖かさは、今でもはっきりと思い出せる 遠目に見つけた背中に、ため息を一つ ま…